チュベローズは、香水原料の中で最も扱いが難しい花のひとつだ。熱に弱く、蒸留では香りが壊れてしまうため、溶剤抽出によるアブソリュートとして使われる。グラース産のものは特に甘みと白みが強く、インドやメキシコ産とは香りの構造が異なる。
アブソリュートとコンクリートの違い ¶
チュベローズの花を溶剤(ヘキサンなど)に浸すと、蝋状の固形物「コンクリート」が得られる。これをアルコールで洗浄し、蝋分を除いたものが「アブソリュート」だ。アブソリュートは液体で、香水に直接使える。コンクリートは固形のまま使うこともあるが、主にアブソリュートの原料として使われる。グラースのチュベローズは収穫量が少なく、アブソリュートの価格は高い。
グラース産とインド産の違い ¶
インドはチュベローズの主要産地で、生産量はグラースの数十倍ある。インド産は甘みが強く、インドールという成分が多いため、動物的な温かみがある。グラース産は甘みが抑えられ、白みと透明感が特徴。「Tubéreuse Blanche」でグラース産を選んだのは、この透明感のためだ。重くなりすぎないチュベローズを作るには、産地の選択が最初の決断になる。
「Tubéreuse Blanche」での使い方 ¶
「Tubéreuse Blanche」では、チュベローズ・アブソリュートを中心に、ジャスミン・サンバックとイランイランを微量加えている。ジャスミンはチュベローズの白みを支え、イランイランはわずかな甘みを加える。ベースにシロ・ムスクを置くことで、重さを出さずに持続感を確保した。1998年にソフィー・ヴォワザンが配合したこの構成は、現在も変えていない。
夜の香りとしての特性 ¶
チュベローズは夜に最も強く香る花だ。日中は花を閉じ、夜になると開いて香りを放つ。この性質が、「Tubéreuse Blanche」を夜の香りとして位置づける理由のひとつになっている。気温が下がると揮発が遅くなり、肌の上でゆっくりと開く。夏の夜、屋外での使用に特に向いている。
「Tubéreuse Blanche」のサンプルバイアルは郵送で取り寄せられる。夏のワークショップではチュベローズの実物原料を使用予定。